勉強会で磯部則之理事から講演をいただきました。理事はAGC(社)でヨウ素製造技術研究が始の業務
であることより、ヨウ素製造について話されたが素人には難しくわからないことが多かったので以下に
ヨウ素学会資料集から追記した。
1.天然ガス工業の発展と製法の革新
かん水ヨウ素の時代になり、ヨウ素の製法も、様々に開発された。銅法、でんぷん吸着法、活性炭吸着法、溶媒抽出法、等々である。
特に、銅法、でんぷん吸着法は企業と大学や理化学研究所により産学連携のような形で開発されており、アカデミアとビジネスの協働の先駆のようなものであった。かん水の中に100ppm程度という極めて薄い濃度でしか溶けていないヨウ素をリーズナブルなコストで取りだすには、それなりの叡智を集めることが必要だったとも考えられる。
戦後の1960年代頃までの時期は化学工業において天然ガスを原燃料に使うのが盛んになってきた時であった。高い需要のある天然ガスに支えられ、併産品のヨウ素が大量に生産される環境が整うこととなる。このような中、1工場あたりの生産量が、月産数トンだったレベルから、一桁上の月産数十トン以上のレベルに転換していくのは必然であった。そのような中で、1928年に米国のDow Chemical Corp.の関係会社で開発されていたブローアウト法に光が当たることとなった。この方法は、原理的には大量生産に適した方法であった。すなわち、ヨウ素の昇華する性質を利用したもので、かん水に酸化剤を加えヨウ素を遊離させて空気と接触させ、気化したヨウ素ガスをヨウ化物イオンに還元し、濃縮するものである。「ヨウ素が遊離したかん水と空気の接触によるヨウ素の昇華」のプロセスがブローアウトという言葉の由縁とおもわれる。しかし、実機上は何故か理論通りの効率がなかなか出せなかったようである。
但し、この方法は、海水からの臭素の採取の方法としては、工業的にも早くから軌道に乗り、1934年にDow Chemical Corp.が実用化した。日本でも1941年に東洋曹達株式会社(現 東ソー株式会社)が軍の命令を受けて逸早く取り入れて大規模生産に進んだ他、三菱化成工業株式会社牧山工場(現AGC株式会社)、三井化学工業株式会社大牟田工場等、いくつかの会社でも採用されたが、当時の臭素の主たる用途が軍用航空機用ガソリンのアンチノッキング剤だったため、終戦とともに休止を余儀なくされた経緯がある(27 )。
日本でのかん水ヨウ素生産へのブローアウト法の本格的なトライは、1952年(昭和27年)であった。一つは大多喜瓦斯株式会社(現 関東天然瓦斯開発)によるものであり、もう一つは、日本天然瓦斯興業(現 日本天然ガス)によるものであった。但し、両社の社史(24)(26)によれば、いずれも小規模ないしは、実験段階にとどまっていたとされる。
このような状況下、1960年、旭硝子株式会社(現 AGC)が伊勢化学工業に資本参加する。これを機に、臭素をブローアウト法で海水から取り出す知見を持っていた旭硝子と伊勢化学工業とが協働しての開発が行われる。臭素でのプロセスを熟知した者がこの開発の主担当となり、メカニズムを化学工学的に緻密に検討した後、1961年、ヨウ素製造へのブローアウト法の本格的採用に踏み切った(写真3)。
写真3:大洋化学白里工場
(現 伊勢化学工業白里工場)に設置されたパイロットプラント。
高さ9m程度の小型設備であった。
[AGC株式会社 提供]
1964年には、日宝興発株式会社(現 日宝化学)もテストプラントを設置(25)、その後実用化し、1973年には合同資源でも採用された(23)。更に海外の会社でも次々に展開されるに及び、ブローアウト法は業界の主要なヨウ素生産法として位置づけられることとなった。
また、イオン交換樹脂を用いたヨウ素採取法もこの頃にいくつかの会社で研究が進み、その後、実機レベルで採用されている。
更に現代におけるヨウ素需要はこれからの需要という面では、ヨウ素の「分子をつなぐ機能(クロスカップリング)」、「ポリマーを作る機能(重合制御剤)」、「太陽電池の材料としての機能(ペロブスカイト結晶として)」などが期待されている。
歴史上、ヨウ素は殺菌・消毒剤から大きく活躍の範囲を拡げ、今日に至るまで様々な用途に使われて来た。最早ほぼ使命を終えた用途がある一方で、その反応性の良さから、新しい活用の可能性も出て来ている。今後も様々な場面で役立って行くことだろう。
2.水素関連(石油資源の枯渇)
①製鉄プロセスの水素供給ポテンシャル製鉄プロセス(旧来からの水素製造)
ーー私の人生も水素からーー
1.新入社員としてAGC千葉工場に着任して「水素工場」に迎えられた。
2.水素工業からソーダ工業として板ガラス産業から総合化学工場へと発展する。
現在のAGC社と水素工業の例
ーー私の人生も水素からーー
1.新入社員としてAGC千葉工場に着任して「水素工場」に迎えられた。
2.水素工業からソーダ工業として板ガラス産業から総合化学工場へと発展する。
現在のAGC社と水素工業の例ーーグリーン水素製造に適したフッ素系イオン交換膜FORBLUEを販売して水素製造に貢献している。(以下関連説明)
再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して製造するグリーン水素は、新たなクリーンエネルギーとして注目されており、世界各国で製造・供給が計画されています。現在実用化されている水電解装置は、アルカリ型と呼ばれる方式が主で、水力発電など電圧変動の少ない電源に適している一方、太陽光発電など電圧が変動し易い電源には不向きなため、これらの電源を効率的に活用可能なPEM*2型への関心が高まっています。またPEM型に使用するイオン交換膜の長寿命化を実現する材料として着目されているのがフッ素ポリマーです。
当社は、世界的に急拡大するグリーン水素需要に対応するため、独自の高機能フッ素ポリマーを原料としたPEM型水電解装置向けフッ素系イオン交換膜FORBLUE™ Sシリーズの量産設備の新設を決定しました。本製品は当社が長年培ったポリマー設計技術と製膜技術による、世界トップレベルの①消費電力を抑制する電圧性能および②水電解装置の安全運転に関わるガスバリア性能*3が特徴で、2017年より試験販売を行っており、多方面から高評価を獲得しています。
AGCグループは、長期経営戦略「2030年のありたい姿」において、独自の素材・ソリューションの提供を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献することを掲げています。 当社はグリーン水素製造に適した高性能なイオン交換膜の提供を通じ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
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